2019年3月 【第七話】現代医療にヒントを与え、補完する漢方

■現代医療にヒントを与え、補完する漢方■

中国紀元前の古典『周礼(しゅらい)』によれば、四科の医科制度「食医」「疾医(内科系)」「瘍医(外科系)」「獣医」があり、その中で最も重要視されていたのが「食医」でした。

人の健康で最も大切なのは食事です。

漢方が無くならないのは、「薬食同源、医食同源」と言われるように、「食」を中心に考えられているからです。

食養生を示さないで使用する漢方は、漢方ではありません。

ゆえに漢方は、食事を食べれば元気が出るのと同じように、正しい処方を出すことが出来れば100%効果が表れます。ただ、人間の症状は一人一人複雑な個性があり、また周りの環境も違い、体の中でも、冷えている部分と熱の部分があり、それにピッタリな処方を一度で出すことは名人でも至難の業です。実際、世界トップクラスの大学で能力も優秀な漢方を学んだ医者でも、「漢方は10人飲んだら3人効くと思えばいい、ダメなら別の処方、5つも出せば効くでしょう。」と言っています。

科学である西洋医学は分析により発達してきました。

体を各臓器などに分けて解析して病気を考えてきました。実際、診療科はどんどん細分化される傾向にあります。

 

しかし、人間はあくまで一つの生命体です。すべての臓器やシステムはつながっています。

 

最新の科学的医学もNHKの番組「人体・神秘の巨大ネットワーク」で取り上げられたように、バラバラに考えられて来た臓器や細胞がダイナミックな情報交換により身体を支えているということが解かってきました。これは真に病気を特定の臓器だけで考えず、体全体のつながりとバランスを重視する、漢方やヒポクラテスの考えに再び近づいているようにも思われます。

また、漢方では太古の頃から治療に考慮される事として、「季節(時間)」「個体差(性差含む)」「年齢」「地域」「環境」なども重要視されます。現代医学でも性差医療や時間医療などが科学的にも証明され、漢方の考え方の後押しをしている様にも見えます。

現在、医師のなかでも総合診療医を目指す方が増えているとも聞きます。

科学が発展し体の部分と、そのつながりが全て解明され、人間の全てのメカニズムを意のままにコントロールし修復できる様になるまで、科学的思考ではなくとも人体全体からバランスを考える漢方は、これからも人々の健康に大きく貢献し続けることが出来るのではないでしょうか。