漢方毒舌小話 其の四「病気とはたたかわない。」

第二話で、西洋医学と東洋医学では、人間の生命に対しての考え方が違うと言いましたが、治療法も全く考え方が違います。
例えば、細菌による感染で病気になった場合、西洋医学では菌を殺す抗菌剤を使用し菌を全滅させようとします。
しかし、伝統漢方では、細菌を外からやってきた邪と考え、それを殺すのではなく追い出す治療をします。
追い出したあと、邪が入ってきた原因である、自分の体力の低下を回復させます。

巷では、癌や慢性病になると「病気とたたかいます。」といって西洋医学の治療に専念する方がほとんどですが、伝統漢方的思考回路では、たたかうことはしません。
なぜなら、慢性病は自分の体の中で起こっている問題だからです。
例えば、癌などは自分の体の中に正常でない自分の細胞が出てきたのですから、本来は仲間だったはずの自分自身の一部が変わった物です。
これとたたかって勝つと言うのは何か矛盾を感じませんでしょうか?
自分の心とはたたかっても、病とたたかうのは如何なものでしょうか?

其々の治療法の違いを簡単に見ると・・・

西洋医学…菌を殺す。
全滅させる(病気を全滅させる)。
病気とたたかう(病気と戦争する)。

東洋医学…邪を追い出す(出て行ってもらう)。
変化させる(病気も自分の一部と考え正常になってもらう)。
病気とたたかわない(身体の調和をとり病の原因をなくす)。

慢性病は、なんらかの意味があって発病しているのです。

たたかうことは、これを呪い憎むことを意味します。
「人を呪えば(憎めば)墓穴二つ」は「病を呪えば(憎めば)墓穴二つ」かも・・・・・。

易経や、日本武道の真髄として出てくる「神武不殺」は病の治療にも通ずるところがあるのかもしれません。